【インタビュー】積極的なコミュニケーションで、品質向上と安定取引を達成。

株式会社 ABM 代表取締役 阿部 稔 氏

(インタビューアー:茨城県共同受発注センター 星、山口)

茨城県共同受発注センターでは、設立10周年ということで、多くのお仕事を発注して頂きかつ障害者福祉に高いご理解を頂いている発注事業者の方を、表彰することに致しました。

優良発注者賞に選ばれたのは、株式会社 ABMです。7年ほど前からボールペンの組立作業等を、継続して発注して頂いております。株式会社 ABM 代表取締役 阿部稔様に、障害者福祉施設との関わり方、安定的な取引のカギ、今後の展開などについてお伺いしてきました。(以下敬称略)

障害者福祉施設の実態を把握し、継続的な取引につなげる

山口:障害者福祉施設への仕事を発注したきっかけについて、教えて頂けますか。

阿部:最初に障害者福祉施設へ発注したのは、茨城県共同受発注センターに出会う前です。地元の社会福祉協議会の方に頼まれて、仕事を発注したことがありました。その時は、社会福祉協議会の担当者が、いくつかの部品等を、試験的に障害者福祉施設に持っていって下さっていました。数ヶ月続きましたが、結局その仕事はできないといってお断りされてしまいました。その後、しばらく障害者福祉施設に仕事をお願いすることはありませんでした。


その後、内職募集のチラシを出したところ、それを見た茨城県共同受発注センターの活動員が訪問してきて取引が始まりました。以前続かなかった経験から、『発注者も作業実態を把握しておく必要がある』と考えました。そこで、最初に発注した2施設を訪問し作業の実態などを把握しました。また、難易度の違う様々な仕事を持ち込み、どこまで出来るのか、どうやったら出来るのかの打ち合わせを行いました。障害者福祉施設といっても、それぞれの障害者の方の障害の度合い、支援者の能力や熱意などで、出来る事が全く違う事がわかりました。今では、取引先の障害者福祉施設の状況を把握して発注することが、安心して仕事をお願いできるカギになると考えています。


本格的に障害者福祉施設との取引が始まったのはその時からです。現在では、北は日立から南は土浦まで、8施設と取引をするなど、障害者福祉施設との関わりは拡大しています。

様々な体験機会の提供で 作業品質を向上

山口:障害者福祉施設との取引で心がけていることはどういった事ですか。

阿部:前述のように、当社が取引先の障害者福祉施設の状況を把握することと、障害者福祉施設に当社の作業を知って貰うための体験機会を提供することです。


取引をする障害者福祉施設が増え、訪問の機会が多くなってくると、最初に施設を見学した段階で、継続した取引ができそうか、単価の高い高度な仕事もお願いできそうか、ある程度分かるようになってきました。『何人ぐらいの体制で実施したいと考えていますか、支援者は何人ぐらいがサポートする予定ですか。』といった質問に、きちんと回答して下さる支援者がいる施設は、その後のやり取りもスムーズで、コミュニケーションが取りやすいです。こうしたコミュニケーションが、安定した取引につながります。


また、様々な体験機会の提供も行っています。取引先の障害者福祉施設の中には、障害者の方のより良いサポートをしたい、単価の高い高度な作業も取り組みたいという思いを持った、熱心な支援者もいらっしゃいます。そのような方には、何時間か当社の本社工場で従業員と一緒に働く機会を作っています。また、障害者の方が、本社工場を見学に来る機会も作っています。こうした体験の機会を始めとする積極的なコミュニケーション活動は、作業品質の向上につながっています。


初めて作業を行う障害者福祉施設の作業品質が安定するまでは1~2ヶ月を覚悟しています。最初から品質が安定するとは思っていません。少し我慢が必要です。

<にこやかに熱い想いを語って下さった、阿部稔様>
山口:障害者福祉施設との取引が、経営に与える影響はありますか。

阿部:経営上のリスク回避に役立っています。文具の仕事は納期が厳しいため、とにかく間に合わせることが大切です。予定通り生産が出来ていないなどの困った事態が発生した時に、長年の付き合いで、多少の無理を聞いてくれる障害者福祉施設もあります。こうした、いざという時に一肌脱いでくれる行為は、本当に嬉しく思います。ただ、いつも無理を言うわけにはいきませんから、少数の障害者福祉施設に依存せず、より多くの障害者福祉施設と取引をすることで、リスク回避を図っていきたいと考えています。

障害者の方の緩やかな社会進出も支援したい

星:昨年には、障害者福祉施設も設立したとお伺いしましたが。

阿部:昨年の8月に、水戸市内に就労継続支援B型「クオリード」を設立しました。定員は20名で、現在12名の方が利用されています。知的障害や身体障害の方が中心の障害者福祉施設です。この施設では、当社以外の仕事も受注するようにしています。障害者の方の様々な能力を伸ばすことを考えているためです。


就労移行にも拡大していきたいと考えています。障害者の方の就職は難しい上に、定着しにくいと伺っています。本人の希望にもよりますが、当社に就職して貰う選択肢も提示できればと考えています。当社への就職であれば、仮に従業員として上手く行かない場合でも、施設で訓練し直して、当社に再就職という措置もとれます。今後は、障害者の方の緩やかな社会進出も支援していきたいと考えています。

(訪問日:2021/9/14)

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